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挽きたての小麦を作ってパンを焼こう!カタネベーカリー片根大輔シェフ

カタネベーカリー片根大輔シェフによる「ファーマーズブレッドレッスン」玄麦を挽いて、パンを作る

2月26日にHappycooking東京本校で行われた、新麦コレクションプロデュースによる「小麦が主役のパンレッスン」、2018年春シーズンの第1回はカタネベーカリー片根大輔シェフによる「ファーマーズブレッドレッスン」。小麦生産者から取り寄せた玄麦(製粉する前の粒の状態の小麦)を挽いて、パンを作ります。

家庭で挽きたての小麦をつくる

そんなむずかしいこと私にできるの? と心配しなくても大丈夫。ご家庭にあるコーヒーミルやミルサーなど小型のミルで麦を挽くことができます。

カタネベーカリー片根大輔シェフによる「ファーマーズブレッドレッスン」玄麦を挽いて、パンを作る

片根さんも、おうちから持ってきたコーヒーミルでがりがりと麦を挽いていきます。
「クラフト精神があふれていていいでしょ? 小麦は粒の状態だとずっと置いといても劣化しないんです。命だから、土にまけばまた生える。生きてるものだから風味が絶対いい」

挽きたての小麦なら、油脂分が酸化して悪玉コレステロールに変わることもないので、栄養素としても抜群です。

片根さんが使った小麦は、十勝の自然栽培農家・中川泰一さんのノア(リンク先で通販可能 https://pirkaamam.com/home/)。小麦を粒=種の状態で手に入れると、世界観が変わってきます。

「僕も毎年プランターに種をまくんです。こんなふうに小麦ができるんだってわかります。麦が実ったらそれも挽いてパンにしたり。小麦を育てたり、農家さんとつながると世界が広がる。土から生えてるものでパンを作るイメージができる。一回やってみるとおもしろいですよ」

湯種を作ります

カタネベーカリー片根大輔シェフによる「ファーマーズブレッドレッスン」玄麦を挽いて、パンを作る

挽いた小麦の下処理を行います。
「全粒粉は、熱でやわらかくしないと、おいしくないし、消化もよくない。沸騰したお湯を加えて、湯種を作ります(全粒粉30%、水45%)。湯種の生地温度は絶対65℃以上にしてほしい。だらだらになっちゃうので、練りすぎない程度で。これを食べたらすごく甘いんですよ。でんぷんが破壊されて酵素によって甘くなる。それがエサになって発酵もしやすい。粗熱がとれたら冷蔵庫で保存してください」

カタネベーカリー片根大輔シェフによる「ファーマーズブレッドレッスン」玄麦を挽いて、パンを作る(全粒粉を入れ終えたところ)

今回作るのはシンプルなカンパーニュ。本ごねは、ボウルの中で行います。まず水と塩、湯種に、全粒粉(湘南小麦)20%を加え、粉っけがなくなるまでゴムベラで混ぜます。発酵は「前日の生地」(老麺)30%で。今回は時間が限られているので、0.05%のイーストも入れますが、本来の狙いは、昔から家庭で作られていたような残り生地をずーっと継ぎつづけるパンのイメージ。さらに春よ恋(江別製粉 春のいぶき)50%も。

生地をチェック。硬さは自分で調整できるんです。

カタネベーカリー片根大輔シェフによる「ファーマーズブレッドレッスン」玄麦を挽いて、パンを作る(テーブルをまわって生地の固さをチェック)

水30%とレシピに書かれていますが、かなりアバウト。生地の状態を見ながら柔軟に対応していくのが片根流。

「硬いな。水10g足しましょう。うん、大丈夫。硬い人は水を入れてください。手につけて混ぜたり、生地に塗ったりすれば入ります。水を入れすぎた人も、次の工程で調節するんで大丈夫です。普通のパン生地の硬さにしちゃえばいいので。ほっとけばこいつら(生地)がひとりでにやってくれます」

カタネベーカリー片根大輔シェフによる「ファーマーズブレッドレッスン」玄麦を挽いて、パンを作る(すべての材料を合わせたところ)

「時間を置いてからまたこねます。置けば置くほどいいと思うんです。30分ぐらい置いて、この間に洗いものとかしてください。ここで置くとこねるのが楽になる。手ごねでたくさんこねるともったいない。最低限のこね方でおいしく作る」

カタネベーカリー片根大輔シェフによる「ファーマーズブレッドレッスン」玄麦を挽いて、パンを作る

生地との対話。おいしいと思えば、それが正解。

こね方は完全に各自の自由にまかされます。
「一回折り畳むだけでもいい。ばんばん強くこねればふわっとしたパンになります。なにもしないと重たいパンになる。生地との対話です。おいしいと思えば、それが正解。『今日はこういうでき』、それでいいじゃないですか。修正の仕方さえわかれば、どうにでもなります。考えて作るのが楽しいんです」

カタネベーカリー片根大輔シェフによる「ファーマーズブレッドレッスン」玄麦を挽いて、パンを作る(こねあがった生地を一次発酵)

「こねあがりは22℃ぐらいがいいです。25℃でも30℃でも大丈夫。寒いところに置くとかいろいろできるんで。種も前日の生地以外でもなんでも大丈夫。全粒粉もあるもので大丈夫だし。そういうふうにして自分の味になる。全員が同じだったらおもしろくないじゃないですか」

カタネベーカリー片根大輔シェフによる「ファーマーズブレッドレッスン」玄麦を挽いて、パンを作る(こねあげ1時間後にパンチしたあとの生地)

一次発酵は3時間。この日の生地を見て「あと1時間半かければ、もっと楽に成形して焼ける」とも。この間、ラップで密着すると保湿されて発酵しやすくなります。

カタネベーカリー片根大輔シェフによる「ファーマーズブレッドレッスン」玄麦を挽いて、パンを作る(一次発酵後の生地)

生地を味見するとわかること

「生地を味見しながらパンを作ってください。こねあげ前とこね上がったあとでどれぐらい変化してるか? 焼きあがるまでにまた変化してる。味を見ながらパンを作ったらいいんです。ここでおいしかったら焼いてもおいしいから。味見に種の味とか粉の味が出てくるんです」

成形も自由。
「そのまま1個で丸めてあげればいいと思います。バゲットみたいな成形でもいいし。分割したい人がいれば、15分ぐらい休ませてから2つで丸めて。この丸めは力をつける意味合いもある。ガスを抜いて、しっかり丸めて大丈夫。この段階で力が弱い人は、2つのほうがいいと思う。小さいほうが火通りがいいので、クープが割れやすい」

カタネベーカリー片根大輔シェフによる「ファーマーズブレッドレッスン」玄麦を挽いて、パンを作る

カタネベーカリー片根大輔シェフによる「ファーマーズブレッドレッスン」玄麦を挽いて、パンを作る

(細長く成形して、挽いた小麦を表面にトッピング)

出来あがりを左右する、生地の見極め方

生地の固さ、見極めがいちばんむずかしいところ。その頃合いをこんなふうに説明。
「丸めはつまんで真ん中に寄せてもらって、ほわっとさせてください。ぎゅっと締めすぎるとグルテンの繊維が固まってしまいます。常にバネみたいにふわふわゆるみを作りながら作っていくイメージです。

窯入れ前のホイロ。早く焼きたいところですが、ここでの生地の見極めで、できが大きく左右されます。
「こっから正念場。ゆるんできて、ゆるみすぎないうちに焼きたい。締まりすぎてると重くなります。ゆるみすぎてると火通りが悪くなる。いい感じのゆるみ方だとぽんって割れて、きれいに焼けます。成形で締められなかった人は早く焼けばいいだけ。どうするかは、生地に聞いてください。生地のなりたい姿にもってってやるのが僕らの役目です」

カタネベーカリー片根大輔シェフによる「ファーマーズブレッドレッスン」玄麦を挽いて、パンを作る

ハード系のパンをきれいにつくるコツ。

「表面を乾燥させてオーブンに入れたほうが、皮がばりばりになります。乾燥した気候の国のパンなので。発酵がまだきてない人は30℃のホイロに入れちゃいましょう。寒いとこに入れればふくらむの遅くなるし、あたたかいとこならふくらむ。基本ですね。でも、最後は出して乾かしたほうがいいです」

カタネベーカリー片根大輔シェフによる「ファーマーズブレッドレッスン」玄麦を挽いて、パンを作る

窯のコツも教えてくれた。
「オーブンの余熱は最大がいい。蒸気も入れて余熱したほうがあたたまります。国産小麦は高めの温度が絶対おいしいんです」

今回のキーワードは自由。お手本通りの工程を真似するのではなく、自由にパンを作って、生地を見て自分で修正する方法だ。

カタネベーカリー片根大輔シェフによる「ファーマーズブレッドレッスン」玄麦を挽いて、パンを作る

「今日はファジーな感じで作りました。粉も安定しない。そこからして、パンってもうファジーなんですから。子育てもそうですけど、ひとつの方向に偏るんではなく、バランスをとりながら、不安定なものを不安定なままにやるのって案外むずかしいんです。ゆるい作り方で、ゆるい世の中を目指しましょう(笑)」

できたパンを食べて、生地が重すぎたり、あるいは軽すぎると思ったら、次回修正する。トライ&エラーの「エラー」さえ楽しめるのが、パン作りのおもしろいところなのだ。

カタネベーカリー
東京都渋谷区西原1-7-5
Tel 03-3466-9834
7:00~18:30
月曜・第1第3第5日曜休
いい材料を使い、ハード系からあんぱんまで多種多様のパンを地元の人たちのことを思いながら焼く。
カフェも併設。さまざまなイベントも。
https://www.facebook.com/kataneb

著書『毎日のパン』(アダチプレス)

Happycooking

新麦コレクションプロデュース「小麦が主役のパンレッスン」など、プロが教えるレッスンが人気
https://www.happycooking.jp

Profile 池田浩明
パンライター。パンの研究所「パンラボ」主宰。ブレッドギーク(パンおたく)。パンを食べまくり、パンを書きまくる。日々更新されるブログ・twitterでは、誌面で紹介しきれないパンの情報を掲載中。主な著者に『パンラボ』(白夜書房)、『パンの雑誌』(ガイドワークス)などがある。
【BLOG】http://panlabo.jugem.jp/
【Twitter】@ikedahiloaki

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