前回はパンの保存方法とパンドミのリベイク(焼き戻し)についてご紹介しました。風味や食感を損なわず、できるだけ早く保存するという話の続きで、今回は<パンの鮮度>ともうひとつ<食べごろ>にも触れておきたいと思います。
◆ 焼きたて=パンの鮮度=食べころ?
まずパンの老化について。必要な水分が抜けて生地がパサつき硬くなるように、焼成後からパンの水分が失われる経過時間と老化は比例しています。
それでは、焼きたて=パンの鮮度=食べごろでしょうか。湯気が立ちのぼるような焼きたてが最も美味しいかというと、実はそうではありません。 パン本来の食感や繊細な風味は、冷める時間とともに現れます。
パンは“冷めたてがいちばん美味しい”!
オーブンから出たばかりのパンはデンプン質の流動性が高く安定していないうえに、余分な蒸気が抜け切っていない状態です。
「焼きたての食パンはスライスできません」とお店で聞くのは、熱いうちにナイフを入れるとパンと刃の接地面が潰れてダマになってしまうから。パンのためにも、もう少し待ってあげてください。粗熱が取れた時こそ、本当の食べごろです。
写真でも右のパンは水分が抜けて内側に凹んでいる様子がわかります。触ると芯の部分はまだ水分を保っているようですが、表面はカサカサして色もくすんできました。
左のパンはクラムもクラストも、しっとり滑らかな肌触り。
簡単に材料の役割もご紹介しますね。
パンの定義は、(小麦をはじめとする)穀物の粉を水で捏ね、酵母(※)で発酵させ焼いた食品。
※ja:酵母 en:イースト fr:ルヴュル
「粉/水/酵母/塩」の主材料(骨格)のみで焼くリーンなバゲットに対して、「粉/水(牛乳など)/酵母/塩/砂糖/卵/油脂(バターなど)」の副材料(様々なクッション材)も入るリッチな配合のパンは、ソフトな口当たりやコクと風味を与えるだけでなく、硬化・老化もゆるやかになります。
ただし、ドイツパン(ライ麦パン)のように翌日以降がおいしいものや、保存を目的としたシュトレンもあります。カレーパンを含む総菜パンは、熱々で食べたいものですね。
買ってすぐ食べられたら最高においしいパン。食べごろだってあります。パンも鮮度が命。粗熱が取れていたらラップ+ジップ付保存袋で冷凍庫へ。そして前回の方法でおいしく食べてくださいね!
TEXT:Yumiko Sanda / Photo:Yumiko Sanda, Pain Kitchen
日々、教室を運営しながら自らも学び、パンに触れる暮らしの中での気づきや、パンを楽しむ皆さんへ伝えたい事を綴っていただきます。アトリエへちょっと立ち寄るような気持ちで、ご覧くださいね。