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パン作りをする人のためのパンキッチン

南九州の新進気鋭 ロビンフッドのシナモンロール、ブーランジェリーパパンの熊本食材のパンを調査!

東日本大震災の年から、山﨑豊シェフ(元Gerard Mulo)、伊原靖友シェフ(ZOPF)、井上克哉シェフ(オーヴェルニュ)がつづけてきた「チャリティー講習会」。17回目は、熊本地震被災者の応援をテーマに、熊本県益城町にある株式会社丸菱で行われた。

地元・南九州から講師に起用されたのは、南九州の新進気鋭。ブーランジェリーパパン(熊本)の西 徳雄シェフと、ロビンフッド(鹿児島)の家弓 武矢シェフ。2人はそれぞれ得意アイテムを披露した。

ロビンフッド 家弓 武矢シェフ「シナモンロールと洋ナシのデニッシュ」


家弓シェフは2つのデニッシュ。シナモンロールはロビンフッドで、人気ナンバーワンのデニッシュ。洋梨のデニッシュは涼やかで夏にぴったり。

まずは、シーターでの生地の折り込み。家庭では真似しづらいけれど、プロの技を見てみたい。3つ折りを3回。いかにきれいな層を出すかで、食感や見た目のうつくしさが決まる。

「シート発酵バターを使います。バターが溶けて生地となじんでしまうと、きれいに層が出ません。直前まで冷蔵庫で冷やして、冷たい状態で折ります」

きれいな四角に生地を伸ばして、バターをきっちりと包む。


「端のほうに片寄ってしまわないように、綿棒で押さえつけます」

シーターへ生地を通して往復させる。

「最初の4回ぐらいは生地を反転させて、全体の厚さを均等にします。余った部分は切り落として、端までバターがいくようにします。真四角になるよう、丁寧に修正しながら」

端までバターが入っているから隅々まできちんと層が浮くようになる。

伸ばした生地を3つ折りする。仕事のうつくしさが目立った。

「輪っか(生地の折り目)の部分を包丁で切り込む。切り込み入れると生地とバターが引っ張られず、きれいに織り込めます」

1回目終了時の生地。

2回目、3回目はさらにすばやく。
「層が増えるにつれ、生地とバターが馴染みやすくなります。冷えてないと伸びません。しっかり冷やして、すばやく折り込むのが大事です」


ひじょうにきれいに折り込みが完了。この状態で1週間は冷凍で保存できる。

ここから、アイテム別に成形を行っていく。

シナモンロールは、生地にシナモンシュガーを塗り、くるくる巻き込む。

「きつく巻きすぎるとシナモンシュガーが出てきちゃう。ゆるく巻いてから、冷やしてカットします。そうすると高さがそろってきれいにできます」



焼きあがったシナモンロールにアイシングを塗って完成。
「アイシングは、バターと粉糖とクリームチーズを混ぜたもの。クリームチーズが入っているので、ぺろっと食べれるんです」

冷凍保存できるデニッシュのシナモンロールは、パンの幅を広げるものだ。
「生地を巻いてカットして冷凍しておけば、いつでも出して焼くだけ。すごく便利なパンなんです。シナモンをコーヒーやナッツ、柑橘に変えてもいいし、アイシング変えるだけでもバリエーションになります」


一方、洋梨のデニッシュは、四角く切ったデニッシュ生地を型にのせ、角を中心に折る。

「4角を折ると丸いデニッシュになりますが、2つの角はあえて折らない。残したところはかりかりして、食感が変わり、おいしくなります。生地の力で具材が飛び出してしまうので、ちょっとだけくぼませます。

洋梨は、缶詰のものを赤ワインとシナモンなどで軽く煮て一手間加える。

自家製のカスタードを絞って、オレンジカットを散らして洋梨をのせ、これを焼き上げればできあがり。

「柑橘を入れることで、夏でもさっぱりします。セルフィーユをのせるだけでおしゃれになりますよね。

焼成後、ナパージュを塗って完成。

ブーランジェリーパパン 西 徳雄シェフ「阿蘇自然豚と熊本季節野菜のパン」


西シェフが作るのは、「阿蘇自然豚と熊本季節野菜のパン」。

まず、生地の仕込みから。九州産小麦をハード系用にブレンドした、大陽製粉「プラム」を使用。そこに上白糖や脱脂粉乳、ショートニングを入れた生地に、オーツ麦を10%、白ゴマを3%配合している。

「ソフトフランスに近い生地。麦ご飯のイメージですね。すごくシンプルで、麦の甘みがして、ゴマをちょっとだけ入れた、食事に合わせるためのパン。調理パンとして使うのにもいいんです」

グルテンをしっかり作ってから具となる素材を入れるのが定石だが、はじめからぜんぶの材料をオールインする。
「オールインしてもそんなに変わらなかったんでそうしています。『こうじゃないといけない』っていうのが苦手で。もしかしたらこうできるんじゃないか? って自由に考えています」


普段から熊本の食材を使うことに熱心な西シェフ。今回は地震で大きな被害のあった阿蘇の応援の意味も込め、阿蘇自然豚ベーコンを使用する。


地元産の新鮮なアスパラの皮をむき、色鮮やかにゆでる。手間はかかるが絶対においしいはずだ。


−5℃の冷蔵庫で保管した生地を、分割・丸め。押し広げたら粒マスタードを塗り、ベーコンとゆでたアスパラ、ミニトマト、チーズを。赤と緑のコントラストがにぎやか。味は塩胡椒でまとめる。

「丸めた生地を叩いて、具材をのせるだけ。しっかりガスを抜いてあげるのがポイントです。野菜は市場の人に旬のものを紹介してもらって、季節によって変えています。ものによってはさっとゆでるものもありますし、かぼちゃなんかはしっかりゆでます」

焼成は浅めに。それがベーコンの脂の旨味を活かすポイント。短時間の焼成で済むソフトな生地だからこそ。



5人が講習会で作ったパンは、熊本地震の被災者の人たちに手渡された。1日も早い復興を祈りつつ、今回の原稿を終わりたい。

ロビンフッド

鹿児島県鹿児島市吉野1-30-2
Tel . 099-244-5050
Open. 7:00~17:00(火水休)
robin-kagoshima.wix.com/robinhood
父が創業した店を2代目の家弓武矢シェフが継ぎ、5年間休業ののち、リニューアルオープン。
ブーランジュリー K・ヨコヤマでの修行時代、楽しさに目覚めた折り込み生地をメインのアイテムに据える。店に入ると立体的に盛られたさまざまなデニッシュが目に飛び込んでにぎやかな印象。午前中に売り切れることもしばしばあるほどの人気商品に。

パ・パン

熊本市西区野中3-8-1 BaccoA号
Tel . 096-351-6101
Open . 8:00~19:00(火休)
https://www.facebook.com/pg/papainkumamoto/about/
子供をあしらったロゴは、子供たちに安心して食べてもらえるよう添加物をなるべく使わない店を目指していることのシンボル。熊本の野菜を使った調理パンやサンドイッチ。クロワッサンに、甘めのカスタードがのったエッグタルト。パートの女性たちとわいわい働く、楽しいお店の雰囲気も魅力のひとつ。

Profile 池田浩明
パンライター。パンの研究所「パンラボ」主宰。ブレッドギーク(パンおたく)。パンを食べまくり、パンを書きまくる。日々更新されるブログ・twitterでは、誌面で紹介しきれないパンの情報を掲載中。主な著者に『パンラボ』(白夜書房)、『パンの雑誌』(ガイドワークス)などがある。
【BLOG】http://panlabo.jugem.jp/
【Twitter】@ikedahiloaki

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