初心者には簡単に~もっと深く知りたい。手作りパンキッチン。

パン作りをする人のためのパンキッチン

pain stock 平山哲生シェフのパン作り~グルテン・発酵種・pH

パンを作ることが好きでパンを通じてなにかできることはないかと常に考えている、と話すpain stock 平山哲生シェフ。平山シェフのパン作りをもう少しお聞きしています。
pain stock 平山哲生シェフ

―― ハード系だけでなくブリオッシュ生地などもpain stockのパンは口どけのよさに特徴があるように思います。製法なのか配合なのか、どう出しているのでしょうか ――

口どけの良さは、pHを下げることでタンパク質を溶かす成分をどう使うか考えていますね。タンパク質を溶かす成分として酵素を使う時もあれば、タンパク質を軟化させることが主なら乳酸菌、という感じです。作ってみて口どけが悪いなと思ったら、どうするとするっと溶けるようになるかを考えます。

酸味が出すぎていない生地を作るために、pain stockでは前日にレーズン種から混ぜてルヴァンリキッドを作って、当日の生地に加えています。口どけ=グルテンが口に当たるということなので、タンパク質をどう溶かすかを意識して組み立てています。
または水の量を増やすとか。単純に生地が軟らかくなると口どけもよくなります。口どけのよさは何から生まれているかというと、pHをおとす、酵素をきかせて(ルヴァンを入れるなど)作ることを意識しています。
pain stock 平山哲生シェフ

―― 数種類の種を使用している理由を聞かせてください ――

種はそれぞれのイメージがあって…
サワー種は、発酵力が強くて縦に上がるイメージ。
レーズン種は、酸味がそれほど強くなくて横に流れる、ゆるみをもたせるイメージ。コシ・味のバランス、酸味を入れたいのか、フルーツぽい香りを出したいのか。
パネトーネ種はバランスがいい。酸味もあり縦にも横にも伸びる。
ルヴァン種は、普通はパネトーネ種か、ルヴァン種とサワー種で充分だと思うけれど、レーズン種を足すことで深みが増しますね。それに糖度が上がるので横に伸びるようになったり、独特の食感を得られるようになります。例えば縦に上がるような軽いパンに、もう少し重さが欲しいとか、自分なりの微調整をするのに向いているなと思っています。

自家培養の発酵種のいいところは
―― 自家培養の発酵種のいいところは ――

ルヴァン種のpHを下げるのにはメリットがあって、pHが下がった生地はグルテン(タンパク質)を溶かしている(やわらかくしている)状態なので、ぎゅっと詰まっていてボリュームが出なくても、生っぽくならず口どけよく食べられます。
お客様に「生じゃないの?」と聞かれることがありますが、pHを下げてタンパク質を分解しているから消化にも良くて、おいしく食べられるという説明もできます。
パンの製法として、成形してすぐ焼くというのは抵抗があると思いますけど、2次発酵で緩ませて焼くという工程とは異なるような、違うやり方をするときに自分なりの理論の裏付けがあれば自信を持ってそのパンを出せるし、商品の幅も広がる。アイデアも増えて、それからまた違うジャンルのものを作り出せるかもしれないでしょう?

かつての師匠である(シニフィアンシニフィエ)志賀勝栄さんが、とても目の詰まったパンを焼いていて、ずっと生焼けなんじゃないかと思っていて。でも食べたらスッと食べられる。おいしいと感じる、なぜかと理由を聞いたら、答えは「pHを考えてる?」でした。
pH、酵素、デンプンのことを考えだしたのはこの3年くらい。でもそれを考え始めたら自由度が増えてきて、これでいいのかな?と思っていたことも自信をもって出すことができるようになっていて、お客さんにも説明できます。パン作りのおもしろさを感じながら少しずつ、今も勉強しながらパンを焼いています。

今回はpain stock 平山哲生シェフの製パン理論と生地づくり、fiveran 東原寛幸シェフがデザインする“料理”パンがテーマの講習会でした。東原シェフはfiveranでも開業に先立ち半年ほど福岡に赴き、「ソフト感が長持ちする生地」「素材のおいしさを引き出すパン作り」「調理パンから料理パンへ」を平山シェフの元で経験されています。御二方の作り出すパンは、似ていて少し違うもの。どちらにも味わうべきパンが並んでいます。

Boulangerie pain stock
福岡県福岡市東区箱崎6-7-6
092-631-5007
営業時間:10:00~19:00
定休日:月曜、第1・第3火曜

fiveran
京都府京都市中京区役行者町377
075-212-5696
営業時間:9:00~19:00
定休日:火曜、第1・第3水曜
http://fiveran.jp/

家庭製パン講師として、自らパン教室を主宰する、さんだ ゆみこさん。ブーランジェリーシェフとの交流も広く、様々な活動されています。さんださんは、「自宅で作るパンのいいところは、自分で選んだ安心の素材で自由に焼き上げたパンを大切な人と食べるひととき。」 と言います。
日々、教室を運営しながら自らも学び、パンに触れる暮らしの中での気づきや、パンを楽しむ皆さんへ伝えたい事を綴っていただきます。アトリエへちょっと立ち寄るような気持ちで、ご覧くださいね。

新着記事

おすすめ記事

ミキサーかけるだけ簡単バジルペーストの作り方

ミキサーかけるだけ簡単バジルペーストの作り方

フレッシュハーブの季節。 バジルって日にちが経ったら、あっという間に黒くなってしまったことありませんか? せっかくバジルの束で買ったのに、使いそびれて・・・、がっかりしたことがあります。 生で使うのは、その日か翌日までにして、新鮮なうちにペ...

パンづくり基本動画

Return Top