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パン作りをする人のためのパンキッチン

パン作りにおけるバターの役割。上手に混ぜ込むコツ

バターをパン生地に上手に混ぜ込むコツ(固さの調整)
フランスでは「バター」というのは無塩バターのこと。日本では有塩バターもありますが、1.5~2%含まれる塩分を差し引いた分量にしなくてはいけません。微妙な塩加減で味に影響が出ないよう、料理・製菓・製パンでは無塩バターを使用します。

では、パン作りでバターはどのような状態で投入していますか?

バターの扱い方は今月のアトリエでもタイムリーなテーマ。冷たいバター=個体=油脂 を生地と乳化させるように入れるイメージで、パン生地へは“冷たくコシを抜いたバター”を混ぜ込みます。

食パンやパンオレの配合量(~15%程度)なら、多少“緩んだバター”を混ぜ込んでも、さほど違いは感じられないかもしれません。“やわらかな(溶けている)バター”を混ぜ込むとどうなるかと言うと‥油脂が分離します。捏ねていくと表面に油がにじみ出ているようなテカリが見られ、コシのない生地になります。出来上がりは伸びやかな膨らみに欠け、食感も良くありません。

注意すべきは、パン生地の温度

ブリオッシュのような40%を超える配合量では、油脂を分離させず捏ねあげることが大切です。ポイントは生地温度を上げないこと。室温を低くし、手捏ねで作る場合は手が温かいなら氷水などで冷やします。小麦粉を冷蔵または冷凍することも有効な方法です。

バターを混ぜ込みやすい状態にするには

もうひとつのポイントはバターの可塑性を上げること。つまり、冷たいバターを麺棒でたたき溶かさずにコシを抜いた状態にします。
冷蔵庫から出した5℃前後のバターは、麺棒で叩くと13℃~18℃まで上がります。麺棒で叩く圧力が加わると「可塑性」という性質が高まります。バターは使う直前まで冷蔵庫に戻しておきます。〔可塑性…固体に外力を加えて変形させ 力を取り去ってももとに戻らない性質〕

▼麺棒でたたいた状態
パン作りにおけるバターの温度

バターの状態をコントロールするのは折込用のバターを作る時と同じですね。硬くてもだめ(バターが割れる)、軟らかくてもだめ(層がつぶれる)。ブリオッシュ生地では“冷たくコシを抜いたバター”を2回に分けて投入すると、グルテンも繋がりやすくバターもきちんと入りますよ。

▼指の跡がぺりぺりっとなっている図
(この時は11℃→まだバターは冷たくて滑らかさは出ていません)

パン作りにおけるバターの温度

▼指の跡が滑らかに入る様子がわかります(おおよそ15℃~18℃→可塑性をあげる)
パン作りにおけるバターの温度

バターは温度にとても敏感です。
バターが溶け始める温度20℃は、私たち「人」にとっての40℃くらいの感覚なのだそう。10℃くらいならバターは涼しく適温。5℃なら一番心地よい状態。固形の状態、つまり冷蔵庫から出したての5℃のバターが最も口どけが良いのです。

余談ですが‥私の一番好きなバタールの食べ方。薄くスライスしたバターを冷凍庫で数分冷やし、バタールに挟みます。食べる時のバターの温度はまさに5℃くらいですね。口どけは抜群で美味しいですよ。

やわらかなバターの方が使いやすく混ぜ込みやすいと考えがちですが、人間主導ではなくてバターにとって心地良い温度で扱ってあげられるといいですね。

バターを上手に扱うポイント

◆パン生地の温度を上げないこと

  • 室温を低く
  • 手が温かいなら氷水などで冷やす
  • 小麦粉を冷蔵または冷凍する

◆バターを麺棒でたたき、溶かさずにコシを抜いた状態にする

家庭製パン講師として、自らパン教室を主宰する、さんだ ゆみこさん。ブーランジェリーシェフとの交流も広く、様々な活動されています。さんださんは、「自宅で作るパンのいいところは、自分で選んだ安心の素材で自由に焼き上げたパンを大切な人と食べるひととき。」 と言います。
日々、教室を運営しながら自らも学び、パンに触れる暮らしの中での気づきや、パンを楽しむ皆さんへ伝えたい事を綴っていただきます。アトリエへちょっと立ち寄るような気持ちで、ご覧くださいね。

パン作りの基本を知っておこう(道具・材料・工程)

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