パンを焼いてみよう!と思った時に、小麦粉選びに迷ってしまう、どれを買ったらいいかわからない、というお話はよく聞きます。
私が多くの小麦粉の中から種類を絞ってアトリエで使うのには理由があります。ひとつは初心者の生徒さんたちがパンを焼くのに、たくさんの種類を揃えなくてもいいように。もうひとつはストックの量を持ち過ぎず、鮮度の良い状態で粉を使えるように。
見た目は同じ小麦粉なのにそんなに違うの?と感じるのもよくわかります。粉の個性があるので向き不向きはあるかもしれませんが、食べて美味しいのなら…それもまた正解かなと思ったりします。
初心者におすすめしたい小麦粉「はるよこい」
もしも“初めてのパン作り”で小麦粉選びに困っているのなら…「はるよこい」をおすすめします。
私の印象ですが「はるよこい」はフラットで優等生タイプの小麦粉。
ほどよい甘味と癖のない味わいがフラット。製パン性が良いのもいいですね。ただし手捏ねの場合は、蛋白量が多い方ではないのでじっくり気長に捏ねてください。しっかり捏ねた分、きちんとふっくら膨らんでくれるはずです。価格面でいえば中間程度、製菓製パン材料店で手に入りやすいのも魅力のひとつだと思います。
アトリエで使用している小麦粉はベーシックなものばかりですが、メイン2種、メニューによって使用する3種。他にはブレンドする際に扱う2種程。下記ではアトリエで使用中の小麦粉の特徴と、レッスンで行ったパンも記載しています。
作りたいパンに合わせて小麦粉を選ぶなら
「はるゆたか」の後継種で国産小麦の中では比較的蛋白量が多め。ほどよくモチっと甘味を感じる風味が特徴。製パン性もよく、質感を活かした食パン、菓子パン、惣菜系に。種類を問わず普段使いしやすい。アトリエで使用するメインの粉。
◇アンパン、クグロフショコラ、胡桃の食パンなどに。
「きたほなみ」「はるよこい」などをブレンドした粉。味、香り、製パン性の良さがバランスよく作られている。蛋白量が少なめで、大きく膨らませなくてもよいパン、サク感を出したいパンに使っています。アトリエで使用するメインの粉。
◇シュトレン、クグロフサレ、クッキーパンなど。
収穫量が少ないため手に入りにくいと言われる「はるゆたか」。しっとりと、なめらかな生地。味わい深い甘味が特徴。粉の味わいを贅沢に堪能したい食パンなどに。
◇デニッシュ食パン、マーブル食パン、パンドミなどに。
黄色味の強い粉色で、香りよく芳醇な甘味。国産小麦の中でも粘弾性が強めの、モチっとした生地感が特徴。甘さとモチっと弾けるようなキタノカオリらしさを活かしたパン作り、角食パン、ベーグル、ハード系にもおすすめ。
◇リッチなパンドミ、山食パン、チャバタ、パンオノワ(3種の粉をブレンド)など。
「きたほなみ」を石臼挽きにした準強力粉。外皮に近い部分まで石臼でゆっくり挽くことで風味が損なわれにくく、明るいグレーみを帯びた粉色が特徴。豊かな香りと旨味の濃さを味わえ、ソフトなパンからハード系にも。製パン性もよく、お気に入りの小麦粉。
◇パンコンプレ、ガレット、アマニのパンなどに。
上記の小麦粉をベースにして、パートフェルメンテ(発酵生地種)を使う場合はT100を。基本の粉にもう少し風味を濃く出したい場合にはグリストミルなどをブレンドするなどして使っています。
以前は、粉を変えたらもっと美味しくなるのかなとパンの種類によって毎回使い分けてみたり、シェフのレシピで使用している粉で揃えてみたり。小麦粉選びに迷走した結果、使いかけの小麦粉が増えて困った経験が何度となくありました。でも、シェフと同じパンを焼きたい!という方は同じ材料を揃えられることをお勧めします。加水率・生地の質感・発酵具合、最終的な味わいも方向性が変わってしまうからです。
小麦粉選びのポイント
- できるだけ鮮度の良い状態で粉を使いきれるように気をつけましょう
- シェフのパン味を体験するなら、まずレシピ通りに材料を選んでみましょう
- ”どの小麦粉でも焼ける”という自由な考え方も、頭の片隅に入れておくのも
日々、教室を運営しながら自らも学び、パンに触れる暮らしの中での気づきや、パンを楽しむ皆さんへ伝えたい事を綴っていただきます。アトリエへちょっと立ち寄るような気持ちで、ご覧くださいね。