ナッツのパンは、なんだかとてもおいしい。生地に香ばしい風味と、食感のアクセントを与えてくれるクルミ。バゲット生地やライ麦パン生地、食パン生地やパンオレ生地、ブリオッシュからシュトレンまで。ベースの生地によって印象も変わる万能選手のような存在です。
クルミを混ぜ込むと、紫みをおびた茶色に変わる部分があります。これはクルミの薄皮に含まれるポリフェノールや鉄分などの成分が生地に浸透するから。生地捏ねから混ぜ込むことで旨味(風味)が移り、クルミ単体の食感や風味がパンと一体化するように感じられます。
クルミを入れてパンを焼こう!と準備をしたものの、さて下処理をどうしたらと困ったことはありませんか?
こんな風に考えてみてはいかがでしょうか。カリっとした食感、香ばしさをパンに入れたい場合はロースト。生の食感(柔らかさのある歯ごたえ)を活かしたいときは、生のまま混ぜ込む。クルミの食感は欲しいけれど風味や渋味は乗せたくないパンには灰汁抜きを。
このように「作りたいパンのイメージ」から「クルミの特徴の出し方」、「下処理」を考えるといいですよ。
ローストして色が強く付きすぎると苦味がでるので気をつけます。オーブン設定150~160℃ 13~15分前後で様子を見てください。少量であればフライパンで少し色付く程度に乾煎りしても。ローストしたものは酸化しやすいので早めに使いきります。
焼成時にクルミにもきちんと火がはいります。発酵~焼成にかけてクルミの風味がパン生地に移行して、生ならではの柔らかさのある歯ごたえ、食感が得られます。
1時間ほど水にさらしておくと薄皮の色が水に移ります。時々水を替えながら、最後にキッチンペーパーなどで水気をきり、乾いたものを使います。風味や渋味を生地に移したくないパンなどに。
使いきれずに残るとき、ぜひこちらも参考にしてみてください。
クルミに限らずナッツ類は酸化が早いため、鮮度がよく品質管理のしっかりしたものを選ぶようにします。未開封であれば冷暗所で、開封したものはジップ付き袋などに入れて空気を抜き、野菜室か冷蔵庫で保存を。量が多くて早く使いきれないようであれば冷凍保存もできます。特にマカダミアナッツは油脂分が多いので冷凍保存がおすすめ。
世界最古のナッツとも言われているクルミは、ナッツ類でオメガ3脂肪酸を最も多く含んでいるなど、栄養価の高さからも話題のスーパーフードです。
日本でもポピュラーなカリフォルニア産クルミは、アメリカ農水省が定める厳格な品質基準に基づいて栽培、加工されていて品質が安定しているのが特徴。世界消費量のうち2/3を生産するカリフォルニアではチャンドラー、ハワードなど約40種が栽培されていて、歯触りがよくマイルドな味わい。フランス・グルノーブルは名産地として名高く風味も格別。
いざ使うとき「どうしたらいいのかな?」と感じる素朴な疑問ではないでしょうか。ぜひお役立てください。
日々、教室を運営しながら自らも学び、パンに触れる暮らしの中での気づきや、パンを楽しむ皆さんへ伝えたい事を綴っていただきます。アトリエへちょっと立ち寄るような気持ちで、ご覧くださいね。