当サイトの動画コンテンツで、パン作りをわかりやすく説明されているパンデュースの米山雅彦シェフ。 野菜をふんだんに乗せたパンが代名詞のようになっていますが、可愛らしい乙女なパンも、クスッと笑ってしまうような面白さがあるパンも、米山シェフらしいと思うのです。今回はパンキッチンのこと、パン作りのこと、パンデュースらしさ、とは。2回に分けて伺います。
▼さんだ
本題に入るまでに随分話が逸れて‥時間がかかりましたが米山シェフ(以降シェフ)よろしくお願いいたします。
まずは「パンキッチン」について。初めてこのサイトの話を伺った日、動画も食い入るように観ました。今も更新される度に拝見しますが、とてもわかりやすくて、あぁこんなパン焼きたいな!とワクワクします。皆さんにはどのように役立ててほしいですか?
▼米山シェフ
レシピがあれば出来るわけではないんですよね。本や写真だけではわからない「丸め方」、「生地の触り方」とかね。動画だと一般の人が家で作るとき、経過を見てもらえるからいいでしょう? もちろんやり方は人それぞれなんですけど。
▼さんだ
パンの料理番組ですね!大切な要素こそ、動画で伝えるメリットが活きますよね。私は大手パン教室も含めて4か所で習った手捏ねは、全て違う方法。でもどれが間違っているわけではなくて。出来上がるパンやレシピ、全体的な工程の違いでもあり、其々の良さを感じることができました。
▼米山シェフ
手捏ねに基本のかたちはないと思ってます。自分流の捏ね方・丸め方ではあるけれど、僕なりにおもう、「基本の作り方」を動画で紹介しているので、参考にしてもらえたらいいですね。
▼さんだ
シェフ方の手元を講習スタイルで見られて興味津々です。 講習といえば、シェフは多忙な合間に毎月10本のパン教室をされていますよね。(ここでは家庭製パン講習のこと。他に専門学校やプロ向けの講習をされる時もあります。)いつも楽しみながらされている印象を受けています。
▼米山シェフ
そう!10本もね!やることは自体はとても楽しいです。厨房でパンを作っていて、その場で「美味しい顔」を見られることってないけれど、お客さんの喜んでいるのを直に感じられるから。あと、パン教室のメニューに2つくらい“おもしろさ”を入れるようにしていて。
▼さんだ
おもしろさ!シェフらしい!
▼米山シェフ
素材とか、作り方とかね。おもしろいかなって思うポイントを2つ。僕としては、餡の炊き方が面白ポイントだと思っていたのに、あれ?ただ餡を包むだけの作業に興味があるんだ、と思ったりする。包餡って面白くないと思っていたけれど。自分の面白ポイントがずれている時もあって。それもなんだかいいでしょ。
▼さんだ
さすがですね。面白ポイントが2つも、だなんて。‥たいへんそうです。
▼米山シェフ
そうそう、「さすが!」と褒めてほしい。いつもそこを意識していたり。だから生徒さんが試食している時もかなり見てます!反応が気になりますから…。 毎月のことなのでレシピを考えるのが苦労するところですね。でも期待を超えるレッスンを心掛けています!しんどいけど 。
▼さんだ
いつも美味しくて楽しいパンをありがとうございます!レッスンから商品化されたパンもたくさんあるの、嬉しいです。教室の生徒さん方や、サイトをご覧の方に対して、シェフからのパン作りのアドバイスはありますか?
▼米山シェフ
「自由に」かな。レシピは数字ばかりでしょ。温度管理や時間は確かに大事だけれど、自由な感覚で食べたいものを作ってくれたらと思っています。クープを綺麗に開くには…という内容の質問も受けるけれど、割るために強くて硬い生地を作るなら、割れなくても食べて美味しいと感じる柔らかさ(硬さ)でいいと思います。もちろんお店はそうはいかないけれど。 家で作るパンなら、毎日作れるとか、手間がかからないとか、そういうのがいいな。
▼さんだ
とはいえ、上手く焼けない、失敗して凹んでしまうこともあります‥。私も幾度となく失敗を繰り返すので、失敗なのか模索なのかわからない迷路に迷いこんだり。
▼米山シェフ
見た目の判断はひとまず置いておいて、食べて美味しいかどうかがポイント。角食パンを焼いてみて角が思うように出なかったとしても、美味しかったらいいんじゃないのかな? 例えばパンデュースでは“わざと”過発酵にはしない。過発酵気味なのが失敗かどうかはわからないですよ。でも僕の好みじゃない。”発酵は若め”、そこに美味しいと感じるポイントがあるから、それでいいと思ってパンを焼いています。もっと自由に、楽しんで。
▼さんだ
シェフの人柄が垣間見える素敵なお話、ありがとうございます。職人としての感性と、面白さに貪欲な部分と、絶妙なバランスですね。
絶妙なバランスですね。後編は、経営者の視点も合わせた”パンデュースのパン作り”で大切にされていることなど、伺っています。
>パンデュース 米山雅彦シェフに聞くパン作り(後編)
TEXT&PHOTO: Yumiko Sanda
日々、教室を運営しながら自らも学び、パンに触れる暮らしの中での気づきや、パンを楽しむ皆さんへ伝えたい事を綴っていただきます。アトリエへちょっと立ち寄るような気持ちで、ご覧くださいね。