角食パンを焼いた後に、あれ‥なんか違うんですけど‥って思った経験ありますよね。山食と角食の間のような半端な窯伸び、カクカクに角が出ている、腰折れした、など。生徒さんから多い質問のひとつ。
捏ね足りない、イーストの量は適切か、発酵温度は高すぎも低すぎもよくない、そして比容積など。複数の原因がかさなっている場合もありますよ。当てはまることはあるでしょうか。
生地が伸びなくて角にならない場合
特に手捏ねで作られている場合、「捏ね不足」、「生地量が適切でない」が主な原因だと考えられます。
ミキシング不足については、ストレート法(ディレクト・直捏)でつくる場合、より時間をかけて、ゆっくり丁寧な生地捏ねをしてくださいね。
生地量が適切ではない=“比容積が合っていない”可能性も考えられます。教室や本で見た型と手持ちの型が違う場合、どれくらいの生地量を入れたらいいのか…。
まず型の容積を量ります。(縦×横×高さで計算してもいいのですがビニール袋を入れて水をぴったり入れて量ります)
一般的に角食パンの比容積は3.8~4.0、山食パンの比容積は3.6~3.8と言われています。数字が大きくなるほどフワフワの軽い食感に。数字が小さければ入る生地量が増えるということで、詰まった質感に寄り、味の濃いパンになります。
◎型の容積cc(g) ÷比容積(A)=生地量(B)
◎型の容積cc(g) ÷生地量(B)=比容積(A)
◎生地量÷ベーカーズパーセント(合計したもの) =粉量
で、計算できます。
比容積については、適切な生地量を把握するのに役立ちます。でも作り手のレシピや目指す食感によって様々です。私自身のレシピは、モチっと系のしっとり滑らかな角食が好みのため、上記の数字には当てはまりません。
焼いた後に腰折れする、しぼむ場合
前文のように「型に対して生地量が足らない」、「捏ね不足」も原因の1つだと考えられますが、「過発酵」もあるかもしれません。
なんとか目安になる位置まで膨らませないと!と高い温度で20~30分も追加して2次発酵をとった時は過発酵になり、焼成後に萎んでしまいます。食べた時には通常より発酵臭の強いパンに感じられます。配合、温度、時間の条件によって異なりますが、酵母も無限に発酵しているわけではないので気をつけないといけないですね。
腰折れした場合、(焼成時間を基にした)焼成温度が適切ではないことも考えられます。生地を多めに詰めた場合は火通りが悪くなりがちです。もちもちの食パンと、焼きが甘い食パンをイコールにしないという点も気にしていただけたらと思います。
逆にフワフワすぎる配合の生地、吸水が多い配合の場合にも、重さを支える力が弱くなるため腰折れしやすくなります。
パンが焼きあがったら、型ごと台に落として衝撃を与えるのも忘れずに。オーブンから出した直後に衝撃を与えて不要な蒸気とガスを逃してあげるのも、腰折れを防ぐ役割を果たしています。
カクカクに角が出てしまう場合
角がカクカクになるのは、ダメではないのです。カクカクの角食が好きであえて作る方もおられますし、ホワイトラインが出にくい配合の生地もあります。でも、被せた蓋の部分に小さな”ひさし”のようにはみ出した生地があるのなら、それは生地量が適切ではない(多い)のか、2次発酵をとりすぎたのかもしれません。
最後に、型入れのパンを焼くときは天板を入れた状態で、家庭用のガスオーブンなら最低20分以上、電気オーブンなら30分は余熱を入れておくことをおすすめします。
TEXT & Photo: Yumiko Sanda
日々、教室を運営しながら自らも学び、パンに触れる暮らしの中での気づきや、パンを楽しむ皆さんへ伝えたい事を綴っていただきます。アトリエへちょっと立ち寄るような気持ちで、ご覧くださいね。