日々、教室を運営しながら自らも学び、パンに触れる暮らしの中での気づきや、パンを楽しむ皆さんへ伝えたい事を綴っていただきます。アトリエへちょっと立ち寄るような気持ちで、ご覧くださいね。
新麦の季節。収穫間もない小麦を“新麦(しんむぎ)”と呼びます。“十勝小麦ヌーヴォー(アグリシステム)”は9月22日を解禁日として、パン屋さんは収穫のよろこびを分かち合うように十勝産の新麦を使ったパンを焼きます。そんな” ヌーヴォーパン=新麦パン”を習ってきました!
習ったのは『スムレラT70』で焼くセミハードのパン、『ゆめきらり』で焼くワンローフ型ミニ食パンの2品。教えてくださるのはパンデュース米山雅彦シェフ。
やや甘味を感じる上質な風味が特徴。石臼挽きは低い温度で挽くことで風味を損なわずに製粉できます。通年は「きたほなみ」小麦、ヌーヴォー商品の時のみ「ホクシン」小麦を製粉。2016年は天候不順の影響により十勝産の収穫量が十分でなく、産地表記は他地域産も合わせた北海道産とされています。
粉の色味はやや灰色みを帯びていて、外皮も挽いているのを感じられる、ザラっとした手触り。早い段階で生地がまとまりやすく風味も豊かで個人的に好きな小麦粉です。
生地は冷蔵長時間発酵で、当日は一次発酵後の生地を分割するところから。ガスを抜かずに優しくまるめる成形は難易度が高く‥でも出来上がると、さすが米山シェフのパンはかっこいい姿に。
クラムは気泡が上に伸びて、しっとりしながらも軽やかな食感。全粒粉独特のえぐみはなく、ほんのり甘みを感じるスムレラのパンは、有塩バターやフロマージュ、コクのあるハチミツが合いそうです。
「ゆめちから」 「はるきらり」 「きたほなみ」を製パン性よくブレンドした小麦粉。窯伸びもよく、しっとりもっちりしたパンに。
湯種製法(配合の一部の小麦粉と熱湯を合わせて練ることで小麦粉のデンプン質がα化=糊化し、生地にモチモチ感を与えることができる製法)でモチモチ感が加わり、艶やかな内相に仕上がります。
優しく丸め、俵型に成形したらそっと型の中へ。このパンが全員分焼きあがってポコポコと並んでいる姿はなんとも可愛らしい様子。捏ねている時から甘い香りのするのが印象的でした。
食パンとは違う、つやぷるモチモチのパン。淡くシンプルな生地はお野菜系サンドイッチや、和惣菜を挟むと白ご飯に似た感覚で味わえそうです。試食ではフレッシュ感ある新麦のパンに大満足。
小麦粉は「スムレラT70」「ゆめきらり」のどちらも ”とかち小麦ヌーヴォー”(アグリシステム)で製粉・販売されているものを使用しています。
北海道の中でも特に十勝は日照不足で小麦の生育が遅れ、さらに収穫時期に長く続いた天候不順により収量も平年を大きく下回るなど、十勝の生産者さんにとって厳しい年となりました。大切に育ててくれた生産者さんと、大地の恵みに感謝の気持ちを込めて、ほんの少しでも“生産者”と“生産地”を身近に感じるきっかけになればと願っています。
パンデュースでは山食・胡桃の食パン・大きなまるパン・とかちヌーヴォー小麦のパンがヌーヴォーパンとして販売されています。今年収穫されたばかりの新麦で焼いたパンを、パン屋さんで見つけてみませんか?
※ヌーヴォーパンの販売は小麦粉(ヌーヴォー)が無くなり次第終了。
TEXT & Photo : Yumiko Sanda
協力:cooking studio Chelibro